君 花

第11章/想い
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「テニス部の子……?」

部屋に戻って奈津美の話を聞いた六花は、思わず驚きの声をあげてしまっていた。

「まだハッキリと断定は出来ないんだけど……多分、そうだと思う」

奈津美はすっかり意気消沈してしまったような様子で答えた。

「で……でも、どうしてわかったの?」

「あのメールにクラスが書いてあったでしょ?同じメール送られてきたテニス部の1年のコが心配して私にメールよこしたんだ。先輩のお友達ですよねって」

六花は相槌をうって奈津美の次の言葉を待った。

「でね、話を聞いてみると、どうやら1年の一部のコにメールが送られたみたいなの。ほら、昼間テニス部の後輩たちに会ったじゃない?映画観終わって、帰ろうとしたときにメールが届いたんだって。そのコたちの他は誰に届いたかまではまだわかってないけど、春人くんにも届いてるみたいだしねー」

申し訳なさそうに奈津美は首をうなだれてしまっている。

「六花が出かけてから、1年の後輩たち全員にメール送ったの。変な中傷メールが1年生に届いているようだけど、すぐに削除して絶対広めたりしないようにって」

「ありがとう、奈津美」

「お礼なんて言わないでよ。あーっ、もう。先が思いやられるなぁ」

そう言って奈津美は合わせた両手の甲を目の上に当てたまま、ベッドに倒れこんでしまった。

「3年の先輩たちが引退して、私、新部長になったじゃない?この間、1年の部員に緊急のときの連絡先にって、私の携帯番号とメアドは登録してもらってるんだ」

奈津美は大袈裟な位に大きくため息をひとつついてから、

「1年の部員にメール送ったときに、宛先不明でメールが送り返されてきたのが一人……いるんだよねー」

と言った。

「え?……じゃ、じゃあ、そのコが?」

「んー……、まだわかんない」

弾みをつけて上体を起こした奈津美は、首を少し傾げるようにして頭をかいた。

「偶然、メアド変えたのかもしれないし。――とにかく、明日、部活あるからそのときに聞いてみるわ」

奈津美の言葉に、六花はコクリと頷いてみせる。


その時、六花の携帯から着メロが流れはじめた。

「――ハルから……」

携帯を開きながら小声でそう言う六花に、奈津美は口をぎゅっと結んで小さくコクコクとうなずいていた。

「もしもし?」

心なしか、声が震えてしまう。

蓮に抱きしめられたことが頭の中によみがえってきてしまって、春人とどうやって話せばいいかわからなくなりそうな六花だった。

「六花?――さっき、ごめんな。変なメールしちまって」

相変わらず明るい声の春人に、六花の胸は痛んだ。

隣に奈津美がいなかったら泣き出してしまっていたかもしれない。

「ううん、大丈夫」

「明日、六花をビックリさせてやるからさ。楽しみにしといて」

「明日?なぁに?」

「内緒。――教えたらつまんねーもん」

電話の向こうで、春人がいつものようにいたずらっ子のように笑っているのがわかる。

「じゃ、今日はちょっと忙しいからこれで切るな。――おやすみ、また明日な」

「うん、おやすみなさい」


六花が終話ボタンを押すのを待って、奈津美が話しかけてくる。

「春人くん、何だって?」

「う……ん、明日ビックリさせることがあるから……って」

「なんだろね?――ところで、さ。蓮さんとはどうなったの?ちゃんと告れた?」

六花が小さくうなずくのを見て、奈津美は嬉しそうにベッドに腰をかけたままぴょんぴょんと弾んでみせた。

「やったねー。――あ、でも、春人くんのこともあるし、喜んでばかりもいられないかぁ」

「うん……、ハルが沖縄から帰ってきたらちゃんと話す」


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