君 花

第4章/春人
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何となく、気まずい日が過ぎていった。

私がこんな風に悩んでいるなんて、きっと蓮は想像もしていないだろう。


教室で友達と他愛のないことで笑いあったり、ふざけたり、いつもと変わらない私でいたけれど、

頭の中の一箇所に真っ白な空間が出来ていて、日に日にそれが大きくなっていく。

その空間の中で、蓮の姿や声がぐるぐると渦を巻いている。


私の中の蓮の存在に、圧倒されたみんなの声や授業中の先生の声は、フィルターを通して遠くから聞こえているみたい。


あの日以来、メッセは立ち上げていない。

蓮から何て言われるか、考えるのも怖くて。

それでも、蓮の声を聞くことが出来ないでいるのが辛くて。


泣きたい夜が何日も続いた。




「たっちばなせんぱーい」

放課後、

下駄箱に向かっていた私は、聞き慣れない男子の声に呼び止められていた。


振り返ってみると、そこにいたのは3人の男子。

見かけない顔だし、1年生のよう。

3人共、髪は茶髪でピアスもしていて、いかにもチャラ男って感じ。


真ん中にいたコが、一歩前に出て右手を高く上げて言った。


「俺、樋口春人は、先輩に交際、申し込みますっ!」


下校時間で人の通りの多い廊下での大声での宣言。

私たちは、一瞬で周囲の注目の的になってしまっていた。



「おー、すっげー!マジ、告ったし」

「せんぱーい、返事ヨロシク。ズバッと切っちゃっても全然OKなんでー」

春人(ハルト)と名乗ったコの後ろにいた2人の男子が、いかにも頭の軽そうな口調でニヤけながらそう言ってきた。

「おめーら、うるせーってぇの」

そんな二人を春人は一喝すると、改めて私に向き直りズボンのポケットに手を突っ込んだまま、私の目の前まで近寄ってきた。

身長は180ちょっとあるみたい。

165の私が見上げる位の背の高さ。

春人はニッと歯を見せて笑うと、体をかがめ、私の耳元に顔を近付けてきた。

周りのヤジ馬の中から、キャーッという声があがる。

歓声じゃなくて、春人の行為を止めようとするような抗議の声。

女のコには人気がありそうなイケメンの部類に入る顔してるしね。

そんな女子たちから、変にライバル視されちゃうのも迷惑な話なんだけど。


そんなことを考えていると、耳元に囁くような春人の声が響いてきた。


「俺、先輩の秘密、知ってんだけど」


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