君 花

第6章/波間を飛ぶ鳥
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「明日から一緒に登校しよ。駅で待ち合わせてさ。――あいつ、もぅちょっかい出さねーと思うけど、心配だし」

校門の前で春人はそう言うと、肩にかけていたバッグを六花に手渡した。

あれだけ格好悪いところ見られちゃったら、絡んでくることもないだろうと六花は思ったが、素直に春人の言葉にコクンと頷いてみせる。

いきなり腕をつかまれた時に振りほどく力もなかった自分を思うと、改めて怖さが蘇ってきて小さく身震いしてしまう六花だった。


「だけど、びっくりした。春人、強いんだね」

渡されたバッグを肩にかけ、六花が春人を見上げると、春人は相変わらずポケットに両手を突っ込んだままで歩き始める。


「強いってほどじゃねーよ。あいつが弱すぎなだけ」

少しイジワルそうに笑う春人を見て、尻餅をつきそうになっていた鹿島の姿を思い出して六花も小さく笑ってしまう。

「好きな女、守れないよーじゃ男じゃねーもんな」

眩しいくらいの春人の笑顔に、六花は思わず俯いてしまう。


春人のまっすぐに自分に向けられる気持ちが嬉しいのと、

自分の中にある蓮への気持ちが負い目になって、

どんな顔で春人の言葉を受け入れればいいのかわからなくなってしまっていた。


「サーフィンやってるから、小さい頃から親父に結構鍛えられてきたからなー。チャラそーに見えるけど、俺、割とタフだよ」

日焼けした肌に白い歯を覗かせて春人は無邪気に笑う。

「写メもサーフィンのだったもんね。海にはよく行くの?」

「うん、家族総出で。もちろんサンタも一緒。天気が良ければ週末はほとんど海に出てる」


下駄箱で靴をはきかえてから、それぞれの学年の階で別れるまで二人は肩を並べて廊下を歩いた。


「今週、六花も行かねー?サンタ、喜ぶしさ。――もちろん、俺も」

階段の踊り場で、春人は立ち止まると、六花の前に立ち塞がるようにしてそう言ってきた。

「うん……、でも」

返事をためらっている六花を見て、春人は小首を傾げて六花の顔を覗きこんでくる。

「でも?」



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