1/9ページ目 母親の元気な姿を見たせいか、帰りのタクシーの中では饒舌すぎるくらいに六花は蓮に話しかけていた。 突然の雨に早く職場へ行こうと、歩行者用の信号機が点滅し始めた頃に自転車で渡り始めた母が右折してきた車にはねられたことや、 こめかみの辺りを切ったので、看護師さんにきれいに拭いてもらうまでスプラッタ映画に出てくる人みたいだったとか、 救急室で母から聞いた話を矢継ぎ早に話し続けた。 蓮も六花の母親の容態がすぐに退院出来るくらいのものと聞いて安心したのか、六花の話をいつものよな笑顔で聞いている。 六花が喋り続けるのにはわけがあった。 俺、ネットとリアルは一線引いてるし 誰とも会うつもりはないから 以前に蓮から言われた拒絶とも思われる言葉。 今日、駅で偶然に会えてこうしているけれど、タクシーを降りたら、もう二度と蓮と会えない可能性だって十分にある。 六花は蓮の口からそれを聞くのが怖くて、ずっとずっとしゃべり続けていたのだ。 蓮も六花の調子に合わせて、今では笑い話になっている自分の友人がケガをしたときの話などをしてくる。 話の内容はもちろん、それを真面目な顔と深刻な口調で話す蓮の様子がおかしくて、六花は口元を両手で押さえながら大声で笑うのを何とかこらえていた。 その時、 自分の左腕が視界に入り、六花の笑顔は波が引いていくように消えていった。 春人のブレスレットが外された左手首。 蓮と一緒にいることを春人にとがめられているようで、六花は救急室を出る時にブレスレットを外していた。 春人の存在を自分から消してしまうように。 蓮と一緒にいられる今の時間は、蓮だけを好きでいる自分でいたかったら。 それが、蓮にとっても春人にとっても裏切りの行為になるとしても。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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