クララベル・ランシング



クララベル・ランシング(Clarabelle Lansing 19??年生)
 [アメリカ・客室乗務員]


 1988年4月28日午後1時48分ごろ、ハワイ島のヒロ国際空港からホノルル国際空港へ向かっていたアロハ航空243便は、マウイ島付近の太平洋上高度24000フィート(約7200m)を飛行中に機体前方左側の外壁が破れ、そこから客室の与圧された空気が流出したため、爆発的減圧が発生し、ファーストクラスから主翼近くまでの18フィート(5.5m)の天井外壁が吹き飛ばされた。

 事故の瞬間、機体がチャックを開けたように崩壊した。乗客は機体の破片を受けるとともに猛烈な風圧にさらされることになったが、おおむねシートベルトを締めており機体から放り出されることはなかった。しかし、事故発生現場付近のファーストクラスの通路を歩いていたチーフ客室乗務員のクララベル・ランシングは、機体の穴から吹き出され、行方不明になった。通路を歩いていたもう一人の客室乗務員サトウ・トミタは機体構造物に体をはさまれたため機外に投げ出されることはなかったが重傷であり、乗客が彼女が飛ばされないように手を握っていた。怪我をしなかった唯一の客室乗務員のホンダは通路を這いながら乗客がパニックにならないようになだめていた。

 パイロットが後ろを振り返った時、機体が大きく歪み折れ曲がっていたために扉から先は空が見えており客室を確認できなかった。パイロットらはただちに緊急事態を宣言し最寄の空港へ着陸することにした。床下の左エンジンの燃料制御ケーブルが切断されたため、エンジンが停止した。このように機体は甚大な損傷を受けていたが、幸い油圧系統が破壊されなかったことで操縦系統が僅かに機能しており、パイロットが傷ついた機体に可能な限り負荷をかけないように操縦した。途中ランディングギアを下げたという表示はでなかったが、これは表示パネルの方が故障していたためであり、大事には至らなかった。最寄のマウイ島のカフルイ空港に通常よりも速い進入速度になったが緊急着陸に成功した。

 この事故で機体の破片や猛烈な風圧を受けた65名が重軽傷を負い、機体も全壊したが、墜落しても不思議ではない機体損傷から生還したことは奇跡だとされた。行方不明になったクララベルについては、飛行していた海上付近を捜索したが、発見できなかったため死亡したとされている。

 事故は金属疲労による機体外壁の損壊が原因であった。航空機の外壁は複数枚の外壁材を接合して組み立てられており、その接合部分は重なり合った外壁材を接着剤で密着させた後に大量のリベットで接合している。通常は接着剤とリベットの力によって強固に固定されているが、機体が老朽化してくると接着部分が徐々に腐食され接着力を失い、リベット周囲の金属にストレスがかかるようになる。航空機の機内は飛行ごとに与圧と減圧が繰り返されており、その圧力は1平方メートル当たり最大6トンにも及ぶことがわかっている。老朽した接合部分は機内の圧力の増減による負荷で徐々に金属疲労が拡大し、次第にマルチサイトクラックという微小なクラックが同一線上に複数発生することとなる。事故は、マルチサイトクラックの発生を見逃し続けたことによりクラックが徐々に拡大し、あるとき複数のクラックがファスナーを開けるように急激かつ同時に繋がることで、風船が割れるように機体が破壊されたものであった。

 事故機となったN73711は、1969年に製造されて以来アロハ航空が運用していたが、事故までの19年間に飛行時間3万3133時間、飛行回数は8万9090回という老朽機であった。飛行時間の割に飛行回数が多いのはハワイ諸島内の1時間未満のフライトを繰り返したためであり、当事故機は当時世界でも2番目に飛行回数が多いボーイング737であった。また、その時点で最も飛行回数が多かったのは同じアロハ航空のN73712、3番目もアロハ航空のN73713であった。この数字は、飛行時間こそメーカー保証の5万1000時間には達していなかったものの、飛行回数については、同7万5000回を大幅に超過していた。また海上を飛行することが多かったことから、潮風の影響で機体の腐食・劣化が進んでいたのが原因とみられている。これは整備に使用していたエポキシ系接着剤の使用が不適切であり、接着不良の箇所から劣化原因物質が入り込んだためである。この劣化をアロハ航空の整備体制は見逃していた。また243便として飛行する直前に、搭乗する際に乗客が前部左舷のドアの上にあった機体のひびに気付いていたが、誰も乗員に告げていなかった。

 1989年6月に国家運輸安全委員会(NTSB)がまとめた調査報告書によると、事故の直接の原因は機体の腐食や亀裂を発見できなかったアロハ航空の整備力の弱さにあったと指摘しているが、同時にマルチサイトクラックが引き起こす破壊の深刻な意味を、航空会社・メーカー・監督官庁のいずれも明確に認識していなかったとも言及した。過去に亀裂や腐食を原因とする事故は複数発生していたものの、機体の老朽化には言及されることはなかった。その意味ではこの事故は機齢が原因と結論付けられた最初の事故であり、古い機体を抱える世界中の航空会社に大きな波紋を及ぼした。

 事故機が大破したもう一つの原因として、流体ハンマー現象説が挙げられる。ペンシルベニア州での列車ボイラー爆発の時にNTSBから相談を受けたこともあるボイラー検査官マット・オースチンの見解によると、事故後の調査で機体側面から人間の頭蓋骨らしき衝突痕および手形のような血液の痕が発見されており、これが吸い出され行方不明となったクララベルが激突した跡と見られている事から、「高度24000フィートを飛行中に空いた10インチの穴を近くにいた客席乗務員が塞いだ結果、機体劣化により約8.5ポンド/平方インチを下回る耐久力となっていた当機は機体内外の気圧差に耐え切れず大破に至った」とした。この説での事故原因となった流体ハンマー現象であるが、オースチンの専門分野であるボイラーの爆発事故によく見られる現象である。なお、この説はアロハ航空243便の事故を調査した元NTSB捜査官ブライアン・リチャードソンも認めた程であったが、脱落したパーツ及び吸い出されたクララベルと言った物的証拠が深海に沈んでしまった事もあり、現時点では公式な事故原因とはなっていない。

 1988年4月28日死去(享年??)


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